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ルールのある場所での餌付けによって

ペット不可のマンションにお住まいの方から相談がありました。

 

「居住マンション近くのお寺に母猫1頭、子猫4頭がいた。母猫は子猫3頭を連れていなくなったが、子猫1頭だけがマンション敷地内に残され鳴いていたのでつい餌をあげてしまった。ご近所からは餌をやるなと貼り紙をされているが、猫が鳴いて困っている。預かりと里親募集をお願いしたい。」という依頼内容でした。

 

当該猫は生後8ヶ月くらい、雌であるという情報もあり、まずは避妊手術をしなければとしっぽゆらゆら杜猫会の会員が現場の視察、捕獲・手術を行いました。

 

当該猫はやはり雌で捕獲と手術は行ったものの、現場視察の結果、管理会社によるマンション敷地内での餌やりの禁止の貼り紙がなされ、餌やり該当者は賃貸契約の解除と退去の警告もありTNRは難しい場所でした。

 

依頼者は当該猫の預かりと里親募集を希望していましたが、杜猫会会員もすでに預かり猫を抱えており、預かりも難しい状況。

 

困難は承知のうえで「地域猫として見守っていただく」旨をご近所、管理会社にお願いするよう調整を進めてきましたが、今回は幸いにして、

依頼者のご近所の方が預かりを了承してくださり、そのうえ里親様も見つけてくださいました。

 

「小さな猫がお腹を空かせて鳴いていればご飯をあげたい」、この心情は理解できるものですが、一度餌をあげれば猫はまた餌を求めてやってきます。「では餌を与えなければいいのでは?」となるところですが、餌を与える人がいなくなれば、猫はいなくなり、他所へ移動するかといえば決してそうとも限りません。テリトリーをもつ猫は、その地域の別の場所で餌を探すようになり、餌がなければ結果としてゴミ集積場を荒らすということもあります。

 

今回の依頼者は高齢で、車も運転できず、ネット環境もないという状況でした。1匹の猫によって住む場所を失うかもしれないという恐怖、ただもうこの猫を見えないところにやってほしいと追い詰められている様子でした。猫が嫌いな人もいるという環境下、集合住宅という居住者の秩序も求められる場所での餌やりは、「かわいそう」という感情の前に一個人で責任を負うことの難しさについて想像してみることも必要なのだと思います。「ペット不可のマンション敷地内で餌付けをしない」というマンション側のルールを否定するものではありません。今回は近隣からのクレームがあったことで、早期に当該猫の手術が済み里親様も見つかりました。近隣の方からの通報がなければ、「マンション敷地内でのルールを守らない行動」が継続され、その場所で子猫が生まれ増え続けるという可能性も秘めていました。

 

私たちとしても仙台市動物愛護行政の基本指針である「人と動物が共に健康に生きていけるまち」の実現を目指さなければならないと痛感する依頼でした。野良猫トラブルは一個人の力での解決は非常に難しいものです。餌やりさんをやみくもに責めるだけで終わることなく、町内会など小さなコミュニティの隅々に地域猫対策の必要性・方法を広められるよう、また共に考えていけるように行政・市民・ボランティアの三者協働の体制を整えていくことが急務です。